うちの職場では、業務で何台かの車両を使っています。利用者の方の送迎を伴う仕事なので、これらの車両はいわば「人の命を預かる乗り物」。だからこそ、毎日の点検は法律上も実務上も絶対に欠かせません。
ところが、その記録方法がずっと悩みのタネでした。
Excelの点検表、こんな課題がありました
これまでは、A4のExcelシートを印刷して、車両ごとに毎日チェックマークを記入していく方式。シンプルといえばシンプルなのですが、運用していると色々と困りごとが出てきます。
- 車検期限がいつなのか、ぱっと分からない。ファイルを開いて確認しないといけない
- オイル交換のタイミングを逃しがち。前回いつだったかをすぐに把握できない
- 担当者が公休の日、後日記録するのが面倒。紙だと挟み込みや書き直しが発生する
- 異常があった時の対応記録が散らばる。あとで「あの不具合いつだっけ?」が分からなくなる
- 月末になると紙の山。ファイリングが地味に大変
「もっとシンプルに、でもちゃんと記録が残る方法はないか」とずっと思っていました。
Claudeに「作って」とお願いしてみた
そんな中で、Anthropicが提供するAI「Claude」を使ってみることにしました。きっかけは、現場のExcelファイルを渡して「これと同じものを、もっと使いやすくしてほしい」と頼んでみたところから始まります。
最初に出てきたのは、ブラウザで動くシンプルなWebアプリ。HTMLファイル1つでできていて、ダブルクリックするだけで動きます。サーバーも、アカウント登録も必要ありません。
「これいいかも」と思って、そこから少しずつ機能を追加していきました。
できあがった機能
ここからは、対話を重ねながら段々と育てていった機能です。
毎日の点検入力
Excelと同じ点検項目(毎日11項目・週次6項目・月次6項目)を、◯・✕・該当なしの3択でタップ入力。異常があった項目は、自動で備考欄が開いて対応内容を記録するようになっています。
自動アラート
- 車検期限まで60日を切ると黄色警告、30日切ると赤警告
- オイル交換から6ヶ月 or 5,000km超で警告
- バックアップを30日以上していないと通知
うっかり忘れがちな期限を、システムが教えてくれるようになりました。
月間PDF出力
Excelと同じ「項目×31日」のグリッド表をA4横1枚で出力。ボタン1つで月次報告書として印刷・PDF保存ができるように。
これが地味に一番ありがたい機能かもしれません。月末に「印刷」を押すだけで、正式書類として保管できる体裁の記録が出てきます。
休業日設定
月によって営業日が違うので、休業日カレンダーを毎月設定可能に。設定した休業日はPDFにも「休」と表示されるので、未実施なのか休業日なのかが一目でわかります。
過去日入力モード
担当者が公休だった日の記録を、後日まとめて入力できる機能。「過去日入力モード」に切り替えると、その日付で全車両を連続して記録できるようになりました。
土日明けの月曜日、複数車両分の金曜日の点検記録をパパッと入力する、というのが当たり前にできます。
バックアップとデータ管理
JSONファイルで全データをエクスポート/インポートできるので、機器故障時の復旧も安心。月1回のバックアップを推奨する仕組みも入っています。
iPad対応
タッチ操作に最適化されていて、iPadのSafariで開いてホーム画面に追加すれば、普段使いのアプリのように使えます。毎朝iPadで起動するスタイルが定着しました。
印象的だったこと
実際に作っていて感じたのは、「ChatGPTやClaudeに頼めば動くものができる」というのは知ってはいたけれど、こうやって自分の困りごとを伝えるだけで、現場で本当に使えるものができてしまうという驚きでした。
私はエンジニアではありません。Excelの関数は使えますが、HTMLもJavaScriptも書けません。
でも、「車検期限が近づいたら警告してほしい」「PDFが1枚に収まるようにしてほしい」「複数車両を同じ日付で連続入力したい」と、現場の言葉で伝えるだけで、Claudeは丁寧にコードを書き、修正し、提案までしてくれました。
何か困ったら「ここがうまくいかない」と伝えれば、原因を分析して直してくれる。これはまさに、自分専用のエンジニアが横にいるような感覚です。
一方で、限界も感じました
もちろん完璧ではありません。
- データはブラウザ内に保存されるため、複数端末で同期するには工夫が必要
- オフラインで動く反面、職員間でリアルタイム共有はできない
- 長期保管にはJSONバックアップが必須で、運用ルールを作る必要がある
このあたりは、本格的な業務システムを買えば解決する話ですが、月数万円のコストになります。「無料で、自分たち用にカスタマイズされたツール」と「有料の完成された業務システム」のどちらを取るかは、規模やニーズ次第かなと思います。
うちのような小規模な使い方であれば、今回作ったものでまったく問題ありません。
現場のDXは、現場の人がやる時代
少し大きな話になりますが、現場業務で「DXが進まない」と言われる理由のひとつは、現場の困りごとを、現場が一番分かっているのに、それを形にできる人が現場にいないことだったと思います。
業務委託すれば数百万円。パッケージソフトを買えば月額。どちらも、小さな組織には重い負担です。
でも、ChatGPTやClaudeが当たり前になった今、**「現場の人が、現場の困りごとを、現場の言葉で伝えれば、形になる」**時代になりました。
今回作った車両点検システムは、開発期間にして実質的にAIとの対話を数時間。費用はゼロ。それでも、毎日の点検業務にピッタリ合うツールができあがっています。
「これからの現場のDX」って、こういう小さな置き換えの積み重ねなのかもしれない、と思いました。
おわりに
もし同じように「Excelで管理しているけど不便」「専用ソフトは高すぎる」と感じている方がいたら、ぜひ一度AIに相談してみてください。
最初は「こんなことできるかな」と半信半疑で投げかけた質問が、気づいたら現場で毎日使うツールになっている。そんな体験は、思った以上に楽しいものでした。
今後も、報告書、業務記録、研修書類など、現場の紙仕事を少しずつデジタル化していこうと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
