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2026年9月14日無料X でシェア

祭りのあとに完成した神輿 — 飲み会が終わってから完成した注文アプリ「乾杯オーダー」制作記

飲み会でドリンクを聞いて回るのが嫌で作り始めたアプリが、飲み会が終わってから 3 世代目で完成しました。当日の失敗をすべて反映した、次の出番が未定の最強の道具の話です。

序

神輿というのは、祭りの前に担ぐものです。私の神輿は、祭りが終わってから完成しました。

幹事は、注文を聞く係ではない

飲み会の幹事をやると、ある時点から仕事がひとつに絞られます。ドリンクを聞いて回る係です。

「生の人ー」「はーい」「ハイボールの人ー」「……」「すみません、さっき何て言いました?」「レモンサワー」「濃いめ?」「普通の」。

これを全員分、飲み放題が終わるまで繰り返す。聞いたそばから忘れる。数え直す。店員さんを呼ぶ頃には、最初の人の分がもう空いている。自分のグラスは、ずっとぬるい。

私は思いました。これはアプリで解ける課題だと。 この判断が、のちに 3 回の作り直しを生みます。

v1: 幹事ひとりで、全部入力する

最初に作ったのは、幹事のスマホ 1 台で注文をまとめるアプリでした。参加者を並べて、それぞれにドリンクをタップしていく。集計は自動。「第 1 回目」「第 2 回目」と注文の回数も数えてくれます。

制作は Claude Code と一緒に。店の飲み放題メニューをプリセットに入れ、あとから「メニューの写真に載っているのにプリセットに無い品目」まで拾い直しました。

  • 瓶ビールは銘柄を選べるように分割
  • 焼酎は麦・芋・米
  • 日本酒は熱燗と冷

誰にも頼まれていません。でも、幹事が「芋ですか麦ですか」と聞き返す手間は、この時点で理論上ゼロになりました。

デザインも凝りました。緑と黒の 2 色、罫線ベースの落ち着いた画面。翌日の深夜 3 時には「回数を第 1 回目に戻す」リセットボタンを付け、その 3 時間後には「目に優しいように」と黒背景に緑の文字へ反転。いつ寝たのかは、コミット履歴に残っていません。

飲み会は、まだ始まっていません。

v2: みんなのスマホから注文を集める

ここで気づきます。聞いて回るのが嫌なのに、結局幹事が全員分を入力するなら、聞いて回っているのと同じでは?

そこで v2.0「みんなで注文」。幹事が会を始めると会コード付きの URL ができ、参加者はそれを開いて自分のスマホから注文する。注文は幹事の画面に集まり、「前回と同じ」ボタンでおかわりも一瞬。

裏側は Cloudflare Pages と D1 で、注文が入ると ntfy で幹事のスマホに通知も飛ぶ。ローカルでは API 12 パターンと、幹事・参加者 2 タブの往復(注文 → 反映 → 回送り → 前回と同じ → 取消 → 終了)まで確認済み。

完璧です。少なくとも、手元では。

当日

いよいよ本番です。結果から言います。

  1. 画面が見にくい。
  2. 結局、口頭で聞いて回った。

こだわり抜いた黄緑と黒の画面は、実際に使ってもらったら「見にくい」と言われました。目に優しくするために反転までした、あの画面がです。

アプリはありました。サーバーも動いていました。通知も飛ぶはずでした。 そして幹事は、「生の人ー」と聞いて回りました。

詳細は省きます。察してください。

祭りのあと

飲み会が終わってからの私は、飲み会の前より真剣でした。

見にくさの正体

まず配色。調べてみると、原因は色の対比が足りないことではありませんでした。文字も、罫線も、枠も、選択中の反転も、全部同じ緑だったのです。階層がないから、どこを見ればいいか分からない。しかも彩度の高い緑の小さな文字は、にじんで読みにくい。

  • 本文は白系(背景との対比 17:1)、補助文は灰色に
  • 緑は主ボタン・選択中・大きな杯数など強調だけに使う
  • 注文済みの枠はベタ塗りをやめ、薄い下地に(30 人分が塗りつぶされても眩しくならない)
  • 注意はアンバー、消す系のボタンは赤の破線

「黄緑×黒の 2 色」は、「黒 + 無彩色の階層 + 緑アクセント」になりました。飲み会が終わってから。

v3: 机の上の QR を読むだけ

次に、根本。v2 は、会コードを配り、URL を開いてもらい、「今は第何回目か」を揃える必要がありました。飲み会の現場は、そんな几帳面に回っていません。 好きな人が、好きなタイミングで、好きなものを頼みます。

そこで v3.0 は、会コードも「回」の概念も捨てて、全面的に作り直しました。

  • 机の上に固定の QR コードを置いておく(印刷用ページ付き)
  • 参加者は QR を読んで、自分の名前をタップして、飲みたいものをタップ。追加も取り消しも自分で
  • 注文は幹事の画面に「未伝達」として、ドリンクの種類×個数で集まる
  • 幹事はそれを店員さんに伝えて、「店員に伝えた」を押して消し込む(押し間違いは「戻す」)

幹事の仕事は「聞いて、覚えて、数える」から「画面を読み上げて、ボタンを押す」になりました。

店員さんに画面を見せるときの読み上げモードは、明るい紙面に黒文字。スマホを持っていない人の分は幹事が代理入力。幹事画面は誰でも開ける QR の裏側なので暗証番号で守る。電波が途切れても、戻れば自動でつなぎ直す。

当日の失敗は、すべて反映済み

当日起きたこと祭りのあとの対策
画面が見にくい無彩色の階層 + 緑は強調だけ。店員さん向けは明るい読み上げモード
結局、口頭で聞いて回った机の固定 QR → 名前 → ドリンクをタップするだけ。聞く工程そのものを削除
会コードや「第何回目」を揃える手間会コードと回の概念を廃止。注文は「未伝達」に溜まるだけ
スマホを持たない人がいる幹事の代理入力

次の飲み会は、未定です

こうして乾杯オーダーは、3 世代目で完成しました。

  • 机の QR を読むだけで、注文が幹事に届く
  • 幹事は画面を読み上げて、ボタンを押すだけ
  • 当日の失敗は、すべて反映済み

足りないものは、ひとつだけです。

次の飲み会の予定。

祭りのあとに完成した神輿は、今日も静かに蔵で出番を待っています。道具だけが、最強になりました。

教訓: 道具は、本番で一度負けてから完成する。できれば負ける前に、手元ではなく本物の飲み会の席で一度試しておくと、祭りに間に合います。

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更新2026.09.15
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